社長ブログ

年収の8〜9倍を、連帯債務で。その住宅ローン、本当に大丈夫ですか

ViVi不動産株式会社の矢郷です。

先日、友人から相談を受けました。

娘さん夫婦が新築を購入しようとしていて、どうやら妻となる娘さん(以下「奥さん」と言い換えますね)が「連帯債務者」になるよう銀行から言われているらしいから本当に大丈夫か相談に乗ってやって欲しい!と。

お二人とも30歳前後。 ご主人の年収は500〜600万円ほど。それで4,500万円を借りる話になっているそうです。

年収の8〜9倍です。

特別な例ではありません。この水準の提案は、いまや珍しくなくなりました。

私はこの仕事を長くやっていて、買ったはいいけど泣く泣く売らざるを得なくなった「失敗事例」をたくさん見てきました。

だからこそ言いますが、これは危険水域ギリギリだと思っています。

販売担当者と銀行マンが、夫婦の収入を合算して借入枠を広げ、年収の8〜9倍のローンを組ませてしまう。

今日はそのことについて、正直に書きたいと思います。


「借りられる額」と「返せる額」は、まったく別物です

銀行が借入OKを出す金額は「上限」であって、「あなたに最適な額」ではありません。

審査に使われるのは今の年収です。これから増える子どもの教育費も、金利が上がった後の返済額も、そこには入っていません。

当社がいつもお客様に提案する基準にしているのは、主債務者お一人の年収の5倍まで。年収500万円なら2,500万円、600万円なら3,000万円です。

「厳しすぎませんか?」と言われます。でも、この基準なら返済比率は年収の16%程度に収まります。銀行の審査基準は35%前後ですから、ずいぶん余裕があります。

金利は今より上がる可能性が高いです。その時に、その余裕が、後から効いてくるんです。


連帯債務は「名前を貸すだけ」ではありません

まず、連帯保証人と連帯債務者は別物です。

  • 連帯保証人:主債務者が返せなくなったときに、代わりに返す義務を負う人
  • 連帯債務者:最初から主債務者と同じ返済義務を負う人

つまり連帯債務は、奥さんも同じ額の借金を背負う契約です。

そのうえで、知っておいていただきたいリスクが4つあります。

1. 離婚しても、抜けられない

金融機関の承諾なしに連帯債務をやめることはできません。外すには全額繰上返済か、代わりの債務者を立てる(当然、審査があります)しかなく、実際は難航します。

家を出たあとに、突然請求が来ることもあります。

2. 奥さんが、他のローンを組めなくなる

信用情報の上では「数千万円の借金を抱えている人」になります。車のローン、教育ローン、将来の事業資金。奥さん名義での借入が通りにくくなります。

奥さんの人生の選択肢を、35年間狭めることになります。

3. 団信は「夫婦連生」でないと片方しか守れない

通常の団信で全額弁済されるのは、主債務者に万一があったときだけです。

夫婦連生団信(デュエット等)なら両者カバーできますが、特約料は通常の約1.5倍。

しかも夫婦どちらか一方でも健康上の理由で不承諾になると、2人とも加入できません。

4. 育休中は、住宅ローン控除の枠を活かしきれない

「連帯債務なら夫婦それぞれ控除が使えますよ」というセールストークがあります。

でも産休・育休で奥さんの所得税がゼロになると、引ききれない分は住民税から控除されるものの上限は年97,500円。それを超える枠は捨てることになります。控除目的で連帯債務にするメリットは、思っているほど大きくありません。


富山には、住宅ローンの隣に「車2台」があります

これは全国向け(特に大都市圏)の本には書いていない、富山の現実です。

我が家も含め、この地域で夫婦共働きなら車2台はほぼ必須です。 では、いくらかかるか。

車両200万円を10年で買い替えるとして月16,700円。 自動車税と任意保険で7,800円。車検・整備・タイヤで5,500円。ガソリン代7,500円。

1台あたり月37,500円。2台で月75,000円の出費です。

35年間で、約3,180万円。

もう一度書きます。3,180万円です。

これは私がここに添付した資料の中で試算した中古戸建+リノベプランの月々の返済額(67,130円)より高い。 にもかかわらず、銀行の審査にこの固定費は入っていません。

住宅ローンで枠を使い切ってしまうと、車が維持できなくなります。富山で車が持てないというのは、生活が成り立たないということです。


「いざとなれば売れば返せますよ」は、成り立ちません

新築の販売担当者からよく聞く説明があります。

「物価が上がるので、不動産価格も上がります。多めに借りても、いざとなれば売れば返せますよ。」

一見もっともらしい。ですが、この説明には決定的な穴があります。

上がるのは「土地」だけです

建物は物価が上がっても価値が上がりません。むしろ減っていきます。

そして新築には、広告宣伝費・モデルルーム・販売手数料・利益が価格に含まれています。それが引き渡した瞬間に消えます。 新築の場合カギを開けたとたんに中古になるので売るときの価格は20%前後下がると言われています。

4,500万円の新築は、1年後には約3,600万円。鍵を開けた時点で、約900万円が消えている計算です。中古の1年後の下落は4%程度ですから、まるで違います。

実際に売ったら、どうなるか

では、実際に売るとどうなるか。

売るタイミングは15年後としました。ご主人43歳、お子さまが中学生と小学生。手狭になった、転勤、実家の事情——住み替えを考える、いちばん現実的なタイミングです。

同じモデルケースで、4つのプランを試算しました。

15年後に売却 A 新築戸建 4,500万 B 新築マンション 4,500万 C 中古戸建×リノベ 2,500万 D 中古マンション×リノベ 2,500万
15年間に払った住居費 2,834万円 2,949万円 1,691万円 1,875万円
① いくらで売れるか 2,388万円 2,410万円 1,390万円 1,240万円
② ローン残高 2,768万円 2,768万円 1,538万円 1,538万円
③ 売却諸費用 108万円 109万円 78万円 74万円
手残り(① − ② − ③) ▲488万円 ▲467万円 ▲226万円 ▲371万円

どれも赤字です。

販売担当者の言うとおり地価が上がったと仮定しても、手残りがプラスになるプランはひとつもありません。

ここは正直に書きます。「中古なら売って儲かる」なんてことは、私は言いません。15年やそこらで売れば、どのプランも持ち出しになります。

そして手残りがマイナスということは、その分を現金で用意しないと売れないということです。Aなら488万円。Cなら226万円。この差は、住み替えたいときに動けるかどうかを決めます。

違うのは「そこまでに払った額」です

Aは Cより1,143万円多く払ったうえで、赤字も262万円大きい。 同じマイナスでも、中身はまるで別物です。


では、何で判断すればいいのか

売却で得をするプランが存在しない以上、判断基準は「売ったときいくらか」ではありません。

「毎月いくら払うか」です。

そこで、15年間に払った住居費から売ったときの手残りを差し引いて、正味いくらかかったのかを月あたりに直してみました。家賃に置き換えた金額だと思ってください。

15年間の実質住居費(月あたり)
A 新築戸建 184,532円
B 新築マンション 189,766円
C 中古戸建×リノベ 106,509円
D 中古マンション×リノベ 124,826円

AとCの差は、月78,023円。15年間で1,405万円です。

同じ15年で、これだけ違う暮らしができます。旅行にも行けるし、子どもの習い事も選べる。

60歳時点の純資産で見ると、Aが2,686万円に対してCは5,427万円。2倍以上の差がつきます。


(添付した資料を参考にしてくださいね。)


それでも「50年ローンなら月々が下がりますよ」と言われたら

最近は50年ローンも登場しました。4,500万円を50年で借りれば、月々は88,911円まで下がります。

28歳で組めば完済は78歳。金融機関の「80歳未満完済」という条件は満たしますから、組めてしまいます。

でも、こういうことが起きます。

  • 15年後の残高は3,311万円。35年返済なら2,705万円まで減っているところが、606万円も多く残ります
  • 65歳時点でも残高1,325万円。そこから78歳まで、年金から月88,911円を13年間払い続けます
  • 利息は260万円多く払います

月々を下げたいなら、期間を延ばすのではなく、借入額そのものを下げてください。

35年返済なら63歳で完済し、定年後の返済はゼロです。


私が「中古×リノベーション」をすすめる理由

誤解のないように書いておきます。私は新築を否定しているわけではありません。新築戸建てには新築の価値が確かにあります。新築マンションも同じです。

(誰の手垢もついていないピカピカの室内は魅力的ですよね!)

余裕のある方が新築を買う。それはまったく問題ないと思っています。

私がおすすめできないのは、ぎりぎりの資金計画で新築を買うことです。年収の8〜9倍を、しかも夫婦の連帯債務で借りて、ようやく手が届く。

危ないのはその買い方であって、新築そのものが悪いという話ではありません。

そのうえで、なぜ当社が中古×リノベーションを軸にしているのか。

減る金額そのものが小さいからです。

10年後に売却 A 新築戸建 4,500万 B 新築マンション 4,500万 C 中古戸建×リノベ 2,500万 D 中古マンション×リノベ 2,500万
10年間に払った住居費 1,828万円 1,896万円 1,094万円 1,211万円
いくらで売れたか(予想) 2,902万円 2,860万円 1,630万円 1,410万円
ローン残高 3,325万円 3,325万円 1,847万円 1,847万円
売却諸費用 124万円 122万円 86万円 79万円
売ったときの手残り(予想) ▲546万円 ▲587万円 ▲303万円 ▲516万円

購入から10年間で減る金額は、新築戸建が▲1,728万円に対して、中古戸建×リノベは▲990万円。値下がり率で見ると中古のほうが大きく見えますが、大事なのは率ではなく金額です。

建物価格の大きな下落は、前の所有者がすでに負担してくれています。土地値に近い価格で買えるから、資産の目減りが緩やかになる。同じ予算なら立地も上がります。立地は、建物と違って古くなりません。

そして富山市は、新築購入への補助をやめ、中古購入への補助に切り替えました。行政の後押しも中古側にあります。(制度内容は年度で変わりますので、最新情報は当社でご確認ください)


若いうちに背伸びしない、一生モノではなくライフスタイルによって住み替えるという考え方

私がお客様にいつもお伝えしていることがあります。

若いときは無理のない、ご主人お一人で返せるレベルの不動産を購入して、余ったお金を運用に回す。子どもが大きくなってお金がかからなくなったときに、それまでの家を売って、より住みやすい住まいに買い替える。

家は、暮らしを支えるための土台であって、目的ではありません。

旅行にも行きたい、外食もしたい、子どもにやりたいことをやらせてあげたい。家のために我慢する暮らしは、もったいない。

買い時は、間違いなく今です。私はそう思っています。あとは「何を、いくらで、どう借りるか」だけ。ここを一緒に整えれば、10年後・30年後にまったく違う景色が見えます。


資料を公開します。同業の方もどうぞお使いください

この記事で使った試算をまとめたプレゼン資料(全25ページ)を、PDFで添付しました。

賢く買うという選択

モデルケースは、ご主人28歳・年収500万円/奥さん27歳・年収350万円/お子さま2人。金利は当初0.7%から11年目1.7%、16年目2.7%へ上昇するシナリオで、4つのプランを同一条件で比較しています。

前提条件はすべて資料内に明記しました。木造の減価カーブ、解体費用の扱い、リノベーション費用の償却、管理費・修繕積立金の上昇率まで書いてあります。数字に疑問があれば、そこを見ていただければ検証できるはずです。

これからマイホームを検討される方は、そのままお使いください。

そして同業他社の皆さんも、自由にお使いいただいて構いません。 出典を書いていただく必要もありません。

(但し、この資料を使ってトラブルが起きたとしても当社は責任追いかねますので、自己責任で解決してくださいね)

年収の8〜9倍を連帯債務で組ませる。そういう売り方が業界の当たり前になってしまったら、10年後・20年後に困るのはお客様です。

そして最終的には、私たち業界全体が信用を失います。

一社でやれることには限りがあります。同じ問題意識をお持ちの方に届けば、それでいいと思っています。


最後に

決めるのは、買主様ご本人(達)です。

私の意見は、あくまでひとつの参考材料にすぎません。判断材料をそろえたうえで、ご自身が納得して選んでいただくのが一番だと思っています。

ただ、その判断材料が「銀行が貸してくれる上限額」と「販売担当者の説明」だけ、というのは危ういと思うのです。

もし迷われていたら、いつでもご相談ください。当社で買っていただかなくても構いません。

資金計画、ライフプランシミュレーション(全部無料です)だけでも、一緒にやりましょう。


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(作成日:2026年9月3日)
ViVi不動産株式会社 代表取締役社長 矢郷修治

土曜日も日曜日もご相談いただけます(水曜・祝日はお休みです。)

本記事の試算はすべてモデルケースです。実際の金利・借入条件・補助制度は金融機関および行政にご確認ください。