「湯船がない家」は不便じゃない?若者が選ぶ“浴槽レス住宅”の魅力と未来
ViVi不動産株式会社の不動産コンサルタント矢郷です。
今日は、近年じわじわと注目を集めている「浴槽レス住宅」についてお話したいと思います。
「湯船に浸からないなんて、もったいない。 お風呂に入った気がしない!」と思われる方もまだまだ多いかもしれませんが、実は都市部を中心に「浴槽のない家」が静かに、しかし着実に広がりを見せています。
それは単なる省スペースやコストカットの発想ではなく、新しいライフスタイルへの移行を象徴する“暮らし方の進化”といえるのではないでしょうか。
「風呂は好きだけど、面倒くさい」時代の価値観
ある調査によると、「風呂が面倒」と答えた人は36%。特に20~30代ではその割合は40%にも上るとのこと。
背景にあるのは、「コスパ(コストパフォーマンス)」「タイパ(タイムパフォーマンス)」といった合理性を重視する価値観の広がりです。
例えば、お風呂を沸かすのにかかる時間は10~15分。湯を張るための水道代、ガス代もかかります。
一方でシャワーならスイッチ一つで済み、掃除の手間も圧倒的に軽い。
これを「退化」ととるのではなく、「進化」として歓迎する視点こそ、私たち不動産業界に求められている姿勢だと思うのです。
「浴槽レス住宅」が実現する合理的な住まい方
東京都内で「浴槽レス住宅」を見てみましょう!
シャワーブースのみの設計で、床面積を最小限に抑えることで賃料も割安。
例えば、12㎡(ロフト付き)で約6万円の家賃という事例もあります。しかも駅チカ、設備充実、築浅という好条件。
掃除の手間が減るだけでなく、空間効率が格段にアップするため、単身者やテレワーカーなど「家を作業場にしたい層」にも刺さっているのです。
また、分譲マンションでもその流れは広がりつつあります。
伊藤忠都市開発の「クレヴィア両国国技館通り」では、77戸中25戸が浴槽レス。結果、リビングが半畳ほど広くなり、利便性と快適性のバランスが取れた空間設計が支持されています。
「風呂は銭湯でいい」という選択肢の広がり
「それでもたまには湯船に入りたい」という声も当然あるでしょう。
そこで登場するのが、“公衆浴場との共存”という新しい発想です。
「風呂は近所の銭湯で入る」――これは以前なら節約のための苦肉の策だったかもしれませんが、今や「好きな時に、贅沢に湯に浸かる」選択肢と捉える人も増えています。
むしろ毎日のお風呂は最低限のシャワーで済ませ、リラックスしたい時だけ銭湯やスパに行くという使い分けは、「オンとオフを切り替える現代的なライフスタイル」に合致しているのかもしれません。
「浴槽レス+多機能化」で暮らしをもっと柔軟に
また、設備の進化も見逃せません。
LIXILの「バストープ」は、布製の浴槽をシャワールーム内に設置できる画期的な商品。使いたい時に広げ、不要な時はたたんで収納できるという“浴槽のオンデマンド化”が可能です。
このように、「浴槽がない」ではなく「浴槽が必要な時だけ登場する」設計へと変わりつつあるのです。
設備費は60万円台〜と決して安くはありませんが、住宅のフレキシビリティを重視する層にとっては、十分に納得感のある投資といえるでしょう。
高齢者にもメリット大。事故防止と介助負担の軽減
浴槽レスの住宅は、若者だけでなく高齢者にとっても大きな利点があります。
溺水事故や転倒のリスクを減らし、介助が必要な方にとってもシャワールームの方が動線が確保しやすくなります。
国土交通省もその有効性に注目しており、広めのシャワールームの導入研究が進められています。
単なる「風呂の有無」ではなく、「誰にとっても快適で安全な入浴環境をどうつくるか」という視点こそ、今後の住宅づくりの要になるでしょう。
不動産の現場から見た「浴槽レス住宅」の展望
ここまでご紹介してきたように、「浴槽レス住宅」はもはやニッチな存在ではなく、時代のニーズに合った“選ばれる住まい”としての地位を確立しつつあります。
もちろん、全ての人に向いているわけではありません。
「一日の疲れは湯船で癒したい」「お風呂で子どもと遊ぶ時間が好き」という方には、従来通りのフルバス付き住宅がふさわしいでしょう。
しかし、限られたスペースでより多機能な暮らしを追求したい、シンプルでミニマルな生活に惹かれる、掃除やコストの手間を減らしたい――
そんなニーズが明確な方にとっては、浴槽レスという選択肢は非常に理にかなっているのです。
最後に|“暮らし”は、どんどん自由になっていく
住まいのスタイルは、時代とともに変わっていきます。
かつては当然だったものが、今では「なくていいもの」になったり、逆に「新しい価値」として再評価されたりします。
浴槽がないから不便、という時代は終わりつつあります。
むしろ「浴槽がないからこそ、自分らしい暮らしができる」と考える人が、着実に増えているのです。
新しいライフスタイルは、常に少数派から始まります。
しかし、その波はいつか主流になる。
私たち不動産業界も、こうした価値観の変化を的確に捉え、提案の幅を広げていくべき時代に来ているのではないでしょうか。
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令和7年5月13日
ViVi不動産株式会社 矢郷修治