私立大学の”入学金ビジネス”の闇――不動産業界の視点から考える理不尽な制度
日本の大学受験制度には、多くの受験生やその保護者が理不尽だと感じる仕組みがいくつも存在します。
その中でも特に不満が多いのが、**「私立大学の入学金は、合格からとても短い入学金支払い期限締め切りが設けられていて、第一希望の大学の発表の前に滑り止め大学の入学金を納入しなければならない」**という制度です。
これは、ある私立大学を滑り止めとして受験した場合、第一希望の私立大学や国立大学に合格しても、その滑り止め大学に支払った入学金は返還されないという仕組みになっています。
この仕組みは、不動産業界の”申込金”の扱いと比べると明らかに異質です。
不動産取引では、購入希望者が物件を押さえるために支払う申込金は、契約に至らなかった場合には返還されるのが基本ルールです。 しかし、大学の場合はまったく異なり、入学を断ったら返金されないという不透明な運用が続いています。
このような制度がなぜ存在し、今後改善の見込みはあるのか、そして裁判ではどういった判例が出ているのかを、不動産業界の視点を交えながら考察していきます。
私立大学の入学金制度の仕組み
まず、私立大学の入学金とは何かを整理しましょう。一般的に、私立大学の入学手続きは次のような流れで行われます。
- 合格発表(2月上旬〜中旬)
- 入学手続きの締め切り(入学金の支払い)(2月下旬〜3月上旬)
- 国立大学の合格発表(3月上旬~中旬)
問題は、この入学金の締め切りが国立大学の合格発表前に設定されていることです。そのため、多くの受験生が「第一希望の大学に受かるかどうかわからないから、とりあえず滑り止め大学にも入学金を支払っておこう」と考え、泣く泣く数十万円を支払うことになります。 この入学金の支払いの平均はおよそ27万円前後と言われていますので、普通のサラリーマン家庭にとっては1か月分の給料に匹敵する金額です。(一般人には大きな損失ですね。)
しかも、この入学金は大学側が入学金は合格者が大学へ入学する権利を保有するための対価として扱われるため、大学側に入学金の返還義務はないものとされています。
多くの大学が、入学金を「施設整備費」などの名目で流用しており、実際に受験生が入学しなかったとしても、大学側には何の損失もないにもかかわらず、返還しないのが通例となっています。(入学しない学生の数は一定数把握しているのでそれを見込んで多めの学生に合格を出しています。)
不動産業界との比較:申込金の取り扱い
不動産業界では、売買契約や賃貸契約の前に”申込金”を支払うことがあります。しかし、この申込金は基本的に契約に至らなかった場合は返還されるのが一般的です。
例えば、
- 不動産売買の申込金:買主が購入意思を示すために支払うが、契約が成立しなければ全額返還される。
- 賃貸契約の申込金:入居希望者が部屋を押さえるために支払うが、契約しなければ全額返金される。
このルールは、公正取引委員会や不動産関連の法規で明確に定められています。消費者保護の観点からも、不動産業界は公平な取引が求められており、違反すれば指導が入ります。
一方で、大学の入学金は返金不要という制度がまかり通っているのは、明らかに不自然です。大学は教育機関なのだから不動産会社よりも「清く」「正しく」あるべきだと思います。 長い間このようなルールが法的に許容されていることは、大きな問題なのではないでしょうか?
裁判ではどう判断されているのか?
この制度に不満を持ち、学生グループが裁判を起こした事例もあります。過去の判例を見ても、
- 学生側が敗訴するケースが多い
- 契約自由の原則に基づき、入学金の返還義務はないと判断される
という流れが一般的です。
学校側も以下のような理由で返還請求できないと主張しています。
- 入学辞退は一方的な権利の放棄である。
- 学納金を返還しないことは一義的で周知のことである。
- 入学辞退で学校が卒業までの学費相当分の損害を受ける。
一方で、学生が勝訴した例もわずかにあります。その場合、
- 大学側が不当に高額な入学金を設定していた
- 入学金の支払いについて、事前に十分な説明がなされていなかった
といった特殊な事情があったケースが多いです。つまり、現状では裁判を起こしても、ほとんどの場合は学生側が負けてしまうというのが実情です。
今後の展望:制度は改善されるのか?
この制度が今後改善される可能性はあるのでしょうか?
- 国が規制に乗り出す可能性:現状では、文部科学省が私立大学の入学金について明確な規制を設けていません。しかし、近年は「教育費負担の軽減」が政治的な課題として取り上げられることも増えており、将来的に一定の規制が入る可能性はあります。
- 社会の声が強まることで大学が自主的に改善:SNSの発達により、この問題に対する不満が可視化されつつあります。学生や保護者が一斉に声を上げることで、大学が自主的に制度を見直す可能性もあります。
- 海外の事例を参考にする:例えばアメリカでは、入学金が返還される仕組みを導入している大学も多く、消費者保護の観点からも改善が求められています。
学生を守る制度改革が急務
私立大学の入学金制度は、明らかに受験生や保護者にとって不利な仕組みになっています。不動産業界では申込金の返還が義務付けられているにもかかわらず、大学がこのようなルールを維持し続けるのは、不公平と言わざるを得ません。
受験生や保護者の負担を軽減するためにも、国の規制や大学側の自主的な改革が求められます。教育機関が学生の弱みに付け込んで金銭を搾取するような体制は、今こそ見直されるべきです。
(「大学全入時代」といわれる現在、大学が多すぎるから大学の経営が行き詰ってしまって、入学金を搾取でもしないと経営が成り立たない事情もきっとあるんでしょう・・・ だからと言って受験生の親に過分な負担を負わせるべきではないと思うんだよなぁ・・・・ 入学もしないのに入学金支払わされたK大学の学生さん来たら、その度にこの苦い思い出が浮かんできそう・・・・(笑))
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令和7年3月9日
ViVi不動産株式会社 矢郷修治