相続放棄が増加する背景と私たちが取るべき対策
相続に関する問題は、今後ますます本格化していくと予測されています
司法統計によれば、2022年に相続放棄が全国の家庭裁判所で過去最多の26万497件に達しました。
この増加傾向は年々顕著で、2019年の22万5416件から毎年増加しています。
なぜ相続放棄がこれほどまでに増えているのでしょうか。また、私たちが将来相続に直面した際、どのような準備をすればよいのでしょうか。本記事では、その背景と対策について詳しく解説します。
相続放棄が増える理由
相続放棄が増加する背景には、さまざまな社会的・経済的要因が複雑に絡み合っています。以下に主な理由を挙げ、それぞれについて詳しく見ていきます。
1. 人口減少と過疎化
地方では人口減少と過疎化が進み、多くの空き家が発生しています。相続対象となる不動産が維持費や固定資産税の負担を伴うため、特に地方に住んでいない相続人にとっては「負の遺産」と感じられることが多いのです。
例えば、富山県では、売り出しても解体費用の方が売却価格を上回るケースが珍しくありません。このような状況下では、地方の実家を相続しても経済的な負担が大きくなるため、放棄が選ばれることが増えています。
特に都市部で生活基盤を築いている相続人にとって、遠方の不動産を管理することは物理的にも精神的にも大きな負担です。その結果、実家の相続を放棄する選択がなされるケースが多いのです。
2. 負債の相続
被相続人の遺産には、プラスの資産だけでなく借金などのマイナスの資産も含まれます。このような負債を引き継ぎたくないという理由で、相続放棄を選ぶ人が増加しています。
特にコロナ禍以降、多くの人々が経済的な不安を抱える中、リスクを回避するために相続放棄を選択する傾向が強まっています。マイナスの遺産を抱えるリスクを避けるため、早い段階で手続きを行うことが重要です。
3. 孤独死と疎遠な親族
現代社会では親族関係が希薄化しており、孤独死が増加しています。その結果、疎遠な親族が相続人となるケースが増えています。
こうした場合、相続財産の管理や手続きの負担を避けるために放棄が選ばれることが多いです。
特に相続登記手続きにおいては、必要な書類の収集や相続財産の配分調整など、多くの手間がかかります。これらの手続きが煩雑であることも、相続放棄が増える一因となっています。
4. 行政の管理不足
相続放棄された不動産や空き家は適切に管理されないことが多く、地域社会の課題となっています。放置された不動産は空き巣に狙われたり、浮浪者が寝床として不法侵入したり、老朽化による倒壊リスクも高まります。また、地域全体の景観や治安にも悪影響を及ぼすことが指摘されています。
しかし、行政による管理や指導が追いついておらず、対応策が求められているのが現状です。
相続放棄が及ぼす影響
相続放棄が増加することで、以下のような問題が発生しています。
1. 空き家問題の悪化
管理されない空き家が放置されることで、治安や景観の悪化、火災や崩壊のリスクが増加します。
2. 地域経済への影響
空き家の増加により、地域の不動産市場が停滞し、経済全体への悪影響が懸念されています。
3. 行政コストの増大
管理されない不動産に対応するため、行政が管理や解体を行う場合、そのコストが増大します。この負担は最終的に住民の税金に跳ね返ることになります。
私たちができる対策
これらの問題を回避するために、以下の対策を講じることが重要です。
1. 生前整理を進める
被相続人が生前に財産の整理を行うことで、相続人の負担を軽減できます。不動産の売却や賃貸活用など、事前に管理しやすい形に整えることが推奨されます。
2. 明確な遺言書を作成する
明確な遺言書を作成しておくことで、相続手続きがスムーズに進み、相続人が放棄を選ぶリスクを低減できます。
3. 専門家への相談
税理士や弁護士など専門家に相談し、相続税や固定資産税の負担を把握したうえで、適切な相続計画を立てることが重要です。
4. 地方不動産の活用方法を学ぶ
地方の不動産は、シェアハウスや民泊施設として活用できる可能性があります。地域活性化のプロジェクトに参加し、資産を有効活用する方法を検討しましょう。
5. 相続放棄後の対応策を知る
相続放棄後の不動産が地域社会に悪影響を与えないよう、行政や専門家と協力して適切な管理を行うことが必要です。
行政や社会全体での対応が必要
個人レベルの対策に加え、行政や社会全体での取り組みも求められています。空き家管理の制度設計や相続に関する教育の普及、相続放棄後の不動産活用など、包括的な対応が必要です。
結論
相続放棄の増加は、社会全体の問題として深刻化しています。しかし、「相続放棄」という選択肢を選ぶ前に、相続財産を有効活用する方法を模索することも重要です。
相続放棄の期限は、**「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」**と決められています。相続が発生する前に準備を進め、適切な選択ができるよう備えておきましょう。
このブログが、将来の相続をより明確で安心なものにする一助となれば幸いです。
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令和6年12月1日
ViVi不動産株式会社
矢郷修治