マンション管理組合が知っておくべき地震保険の重要性
マンション管理組合が知っておくべき地震保険の重要性
本日、富山県「マンション管理士会」主催のセミナーに参加してきました。 参加者の中には、能登半島地震で共用部分に被害があったにもかかわらず、
管理組合が共用部分の地震保険に未加入だった事がはじめて分かって、その結果、復旧工事に200万円以上の費用が全部管理組合負担になってしまうということで、
非常に困っているというお話を伺いました。
このお話を聞いて、マンションの共用部分に地震保険を付帯している割合について興味が湧き、調べてみました。
地震保険の現状
2023年は関東大震災から100年目の年であり、9月1日の防災の日には、財務省など4省の大臣が政府として地震保険の加入を促進しようとしています。
その結果、地震保険の加入者は増加しています。火災保険加入者のうち、地震保険を付帯する 割合(付帯率)は約7割まで増えました。
しかし、分譲マンションの共用部分地震保険に付帯している 割合は、依然として5割に届いていません。マンションの共用部分の地震保険の加入率が5割以下というのは、びっくりする事実ですね。 先日も大きな揺れが有りましたので、富山ではこれから増えるかも・・・・
共用部分の地震保険の必要性
マンションの共用部分の地震保険は管理組合が一括して加入する形を取っています。
地震保険によって受け取れる保険金は、火災保険金額の最大50%であり、損害に応じて「全損(契約金額の100%)」「大半損(同60%)」「小半損(同30%)」「一部損(同5%)」のいずれかとなります。
必ずしも保険金だけで修理費全額のカバーはできないものの、地震保険による共用部の修繕財源の確保は、分譲マンションにとって大きな意味があります。
★全然話は変わりますが、車の保険(車両保険)は地震による車の被害には保険はおりません。
「地震・噴火・津波危険『車両全損時一時金』特約」というオプションがついていれば、一時金として50万円が出る仕組みになっています。(どんな高級車でも50万円ですけど・・・・)
マンションの建物の損害判定の基本は一棟ごと
地震で建物や家財に損害が出た場合には、損害調査によって損害の程度が決まり、保険金が支払われます。
マンションの場合、「建物」の損害については、マンション全体の損害状況、つまり共用部分の損害の程度によって判定されるのが原則です。
共用部分が「一部損」と認定されれば、専有部分についても、たとえ損害が生じていなくとも「一部損」と認定されることになります。
なお、専有部分の損害の方が大きい場合には、その専有部分についての判定で保険金が支払われます。
能登半島地震で被害が有った富山のマンションでも、共用部分の損害が「一部損」と判断されたマンションにおいて、専有部分の地震保険に入っていた区分所有者の方より
「自動的に保険金が支払われた」という話をされていました。
◆共用部分に地震保険を契約するメリット
マンションの場合の判定方法は前述のような仕組みになっているため、共用部分に地震保険が契約されていれば損害調査が入り、専有部分についても比較的スムーズに損害認定されると考えられます。
しかし、共用部分が地震保険に未加入の場合には、マンション一棟の損害調査は行われず、専有部分のみの調査となってしまいます。
この場合、共用部分が一部損であっても専有部分に損害がなければ保険金は支払われないということに・・・・。
地震保険については、共用部分に地震保険をかけておいたほうが、専有部分の地震保険についてもスムーズに運ぶことはメリットといえると思います。
地震保険による修繕財源の確保
地震で損害を受けたのが専有部分(室内)なら、区分所有者が自ら修繕します。
室内以外の躯体やエントランスといった共用部分の損害は、修繕積立金や公的支援を利用して修繕します。
しかし、計画的な修繕に対する積立金が不足しているマンションが約35%(国土交通省「平成30年度総合調査」)もあるといわれる現状では、
計画的な修繕の費用負担すら難しいはずなので、地震による被害で修繕資金が不足することは明白です。
不足分を住民から徴収することも考えられますが、修繕などの対応は住民の合意が前提です。
家計状況や価値観が異なる住民から修繕費用不足分の分担の合意をとることは、かなりの困難を伴います。
例えば、東日本大震災で被災したマンションでは、被害のない階に住む住民から追加負担に反対する声が上がり、住民合意が困難になった事例があります。
また、熊本地震で被災したマンションでは、二重ローンが組めないなど、区分所有者の経済的な事情で合意が困難になった事例もあります。
地震保険の役割とメリット
共用部分の地震保険は、こうした事態に陥るのを防ぐツールとなります。 修繕の財源が確保されていれば、住民合意も進みます。地震保険の損害調査は、屋根や壁、躯体などに着目して行われ、これら主要構造部に3%以上の損害が生じると保険金が支払われます。
そのため、主要構造部でないエレベーターや貯水槽などの付属設備の単独損害は対象外となります。(東日本大震災後の仙台市では、付属設備にすべての地震保険金が支払われている例はあったようですが・・・・。)
共用部分の保険を見直ししてみよう!
今回の能登半島地震を契機ととらえ、「共用部分」も「専有部分」も、地震保険の内容をぜひ検証してみましょう。(できれば火災保険の内容も併せて検証するといいと思います。意外と保険会社によって差が有ります。)
検証のポイントは次のような項目が考えられます。
<共用部分の地震保険>
・地震保険が付帯されているのかどうか?
・地震保険を付帯する場合、保険金額は(火災保険金額の)30〜50%の範囲内でいくらにするのか
補償内容については、各マンションの立地等の特性(液状化のしやすさなど)や築年数によって備えるべき補償内容が異なるでしょう。
また、保険料は管理費に響くものですから、判断材料としては重要です。
令和6年6月8日
ViVi不動産株式会社 矢郷修治